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実家の稼業――運送会社――の手伝いで、経理事務をすることはあっても、基本専業主婦のお母さんは、お父さんがいないと生活が立ち行かないと思っているところがある。
生家も〝出戻りは許さない〟と言う風潮だから、お母さんはどんなにお父さんに虐げられても、離婚するという選択肢なんて思い付きもしないんだろうな。
そんな両親の関係を見ているのが私、実は幼い頃から苦痛だった。
運送会社の社長をしていた私のおじいちゃんも、おばあちゃんのことをお手伝いさんか何かのように思っている節があって、おじいちゃんにびくびくした様子のおばあちゃんを見るのも辛かったっけ。
妻や、一人娘である母には手厳しかった祖父も、娘が産んだ唯一の子供である私には何故かデレデレと甘かった。
けれど、それでも言葉の端々に男尊女卑というか、そういうものが見え隠れするのを幼な心に感じていたから。
私が男の子だったなら、祖父はもっともっと私のことを溺愛してくれたんだろうなと思ったりした。
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