17.わけも分からないままトントン拍子?

8/14

2304人が本棚に入れています
本棚に追加
/720ページ
 小さかった私の頭を撫でながら、祖父が時折うわごとのようにつぶやく、「春凪(はな)が男の子だったら」という言葉は、女として生まれた私の自尊心を、少なからず傷付けたの。  母は結局私以外に子供を授かることができなかったから、私の孫としての地位は幸いにして不動だったけれど、もしも弟が生まれていたらきっと――。  男の子を望む割に母方(うち)の血族には男の子が生まれにくい傾向があるのだと、母が「まるで呪われてるみたいでいい気味ね」とつぶやいたのを私、聞いたことがある。  ――きっと、将来春凪(はな)ちゃんが産む子もの子ばっかりよ、という言葉とともに。  私、おじいちゃんと、婿養子に迎えた義理の息子である父とのほうが実の娘である母と、よりも考え方が似ているというのを何だか皮肉だなと思ったりして。 『春凪(はな)は大きくなったら地元の賢くて立派な男の人をお婿さんに迎えるんだよ。そうして柴田家(しばたけ)に立派なの跡継ぎを産んでおくれ。わしに任せておけば大丈夫だから。な?』  おじいちゃんが私を膝の上に乗せて頭を撫でながら繰り返し繰り返し投げかけた言葉は、私にとっては苦痛(のろい)でしかなかったと、本人は気付いているかしら。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2304人が本棚に入れています
本棚に追加