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お父さんだって同じ。
『おじいちゃんとお父さんで、春凪には素敵なお婿さんを見つけてやるからな』
要するにおじいちゃんとお父さんは、女の子は20歳を過ぎるか大学を卒業するかしたら仕事なんてせず、堅実な男性と所帯を持つのが何よりの幸せ、と言う考え方の人たちなのだ。
それも、相当の良縁でもない限り、自分たちの息がかかった地元の男性が望ましいという感じ。
おじいちゃんやお父さんの目論見が見えれば見えるほど、私はこの家から出たくて出たくてたまらなくなったの。
おばあちゃんやお母さんみたいに、男の人の言いなりになって、依存して生きていくなんて絶対に嫌っ。
そう思って大学進学を機に、忌々しいこの家を飛び出した。
(だけど……今の私、宗親さんに捨てられるんじゃないかとビクビクして……結局はおばあちゃんやお母さんと一緒じゃない!)
ふとそんなことを思って……。
結局は私も〝柴田家の女〟なのだと痛感させられて、自分の不甲斐なさにうつむいた。
(私なんかが宗親さんの隣にいてもいいのかな)
視線を落とすうち、宗親さんのそばで偽装妻に成りすます事さえも、凄く凄く不釣り合いな気がしてきて。
生家への宣戦布告の真っ最中だというのに、私はこの場から消えてなくなりたくなってしまう。
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