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でも――。
それでも……私はやっぱり宗親さんが好きで……。
どんな形でも彼のそばに居たいし、偽りでも構わないから……彼の温もりを独り占めしたいと強く欲していることにも気が付いた。
愛されたいなんて贅沢は言いません。
見せかけだけの偽装夫婦でも構わない。
だからお願い、宗親さん。
こんな私だけど……貴方のそばにいる事を許して……?
そんな私の気持ちなんて、お父さんには分かりっこないんだろうな。
家を存続させるための手駒としてアレコレ言い聞かせながら育てたはずの娘が、まさか自分の言いなりになる傀儡のままでいることを嫌うだなんて、きっと想定の範囲外だったよね?
それは今この場にはいないおじいちゃんにしても同じだと思うけど。
ねえ、お父さん。後生だから私の大好きな人を値踏みするみたいな目で見ないで?
父親の、宗親さんを見る眼差しが凄く嫌で……。
なのに宗親さんはまるでそんなの些末なことででもあるかのように凛としていらして、全然気にしていらっしゃるようには見えないの。
どうしてこの人は、いついかなる時もこんなに自分に自信を持って存在していられるんだろう?
その答えを私、呆れの対象として見ていた眼前の父とともに知ることになった――。
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