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父は、宗親さんのことを田舎の小さな街の、中小企業の課長程度と侮っていたように思う。
それが一変したのは、宗親さんがご自身の出自と、ご両親のこと、それからゆくゆくは自分が歩むはずの道を話されて、一葉の名刺をお出しになった後。
ドキュメンタリー番組やニュースなんかでもよく取り上げられるような、大きな会社の名前が書かれた名刺に、課長や部長どころか、副社長織田宗親の文字。
宗親さんが、そこの会社の代表取締役社長の息子で、妹さんはいるけれど跡取りとして期待されているのは彼の方だと知った後の、手のひらを返したような父の態度。
元より女性である夏凪さんの存在なんて、きっと父の目には入ってもいない。
宗親さんの血統を知った途端の父の豹変ぶりに寒気がして、私は彼に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
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