18.勝算がおありなのですか?

4/15

2302人が本棚に入れています
本棚に追加
/720ページ
「――ですが、申し訳ありません。僕はもう、春凪(はな)さん以外の女性を伴侶にすることなんて考えられませんし、もちろん、彼女のことを諦めるという選択肢も持ち合わせてはいないのです」  それは、私を手に入れるためならば手段は選ばないと言う決意すら感じさせる宣言で。  さっき、会社のトップの座を誰にも譲るつもりはないのだと明言なさったのと同じ口調で、私のことも手離すつもりはないのだと、宗親(むねちか)さんが父に高らかに表明なさる。  全ては父を陥落(かんらく)させるための宗親(むねちか)さんなりの作戦だとは分かっていても、本心から彼に「僕が妻になって欲しいのは君だけなんだ」と乞われているように錯覚させられた私の胸は、締め付けられるような痛みを伴って甘く(うず)いた。  宗親(むねちか)さんはきっと、自分が欲したものは必ずものにすることを信条としてきた人。  だけど……今回は……今回ばかりは無理なんじゃないかと、私は不安になった。  うちのお父さんもおじいちゃんも、柴田(しばた)の家を守るためなら手段を選ばない人間だと、私、幼い頃から身につまされてきたから。  宗親(むねちか)さんの横で彼に手を絡め取られたまま、私は父が「入り婿になれないのならこの話はなかったことに」と言い出すのではないかと、ひとり不安に(おのの)いていた。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2302人が本棚に入れています
本棚に追加