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「――残念ですが何人子宝に恵まれようとも、我が子を手放すつもりは僕にも彼女にもありませんよ?」
宗親さんの取り付く島もない物言いに、父が負けじと言い返す。
「男女関係なく第一子で構わないと譲歩しているのに、ですか?」
その言葉は言外に、例え女の子であったとしても引き受けてやると言っているのに?と言う意図が見え隠れして、私は心の底から悲しくなった。
そもそも生まれてくるかどうかも分からない子供のことを勝手に決めようとしていることにも!
その子供のことをまるで物品の授受ででもあるかの様にサラリと権利を主張してしまえる無神経さにも!
あまつさえ男女の分け隔てなく引き受けることを「譲歩」という言葉で片付けようとする物言いにも!
何もかもに堪らなく腹が立って。
私は無意識に宗親さんに絡められたままの手指に力を込めてしまう。
――と、わたしの怒りを代わりに吐き出してくださったみたいに、宗親さんが心底呆れたように吐息を落とされた。
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