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「柴田さん。失礼承知で申し上げます。――子供は……僕の愛する春凪さんも含め、あなた方が家を存続させるための道具ではありませんよ?」
宗親さんは、怒りに震える私をその広い背中に隠すようにして、気持ち低音で淡々と言葉を紡ぐ。
私は、宗親さんの言葉に、心臓を撃ち抜かれた気がして瞳を見開いて。
思わず見遣った宗親さんの横顔が、いつもの何倍も素敵に見えた。
仮初めの恋人への嘘偽りにまみれた愛の言葉だとしても、こんなふうに私自身を尊重するような言葉、男性からハッキリと言われたことがなかったから……。
今の私には十分すぎるほど嬉しくて泣きそうになる。
「――成長した子供が柴田の姓を名乗りたいと自ら言い出しでもしない限り、血縁だからといって、大人が勝手に彼らの未来を決めていいはずがない。僕はそう思いますけどね?」
宗親さんのその言葉は、生まれながらにして父と祖父によって手前勝手に未来を決められようとし続けてきた私の胸に深く刺さった。
私はこの呪縛から逃れたくて、ずっと足掻き続けてきたのだから。
言いたかったことを全て言ってくださった宗親さんのことを、私、心の底から頼もしいって思ったの。
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