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「うちの祖父はそんなに簡単じゃないと思うんです」
助手席で。
太ももに載せた手をギュッと握り締めたら、右手でハンドルを握ったまま、宗親さんが左手で私の手をそっと包んでいらした。
その大きくて温かい手に、私はドキッとしてしまう。
「春凪。大丈夫だから僕に任せて? ほら、前に言いましたよね? 僕には割と人たらしの才能もあるから春凪の親御さんにも確実に気に入られる自信がありますって」
視線は前に向けたまま。
宗親さんが私の手に載せた手に、ほんの少し力を込めていらっしゃる。
不意に窺い見た彼の横顔は、優しい笑みを浮かべていて。
私は知らず知らず強張らせていた身体の力を抜いた。
「勝算が……おありなのですか?」
恐る恐る問えば「ないと思いますか?」とクスッと笑われた。
私が宗親さんのその言葉にすごくすごく勇気付けられたと同時、「とは言え、僕は動きませんけどね」と小さく付け加えられて、「どういう意味ですか?」と彼の顔をじっと見詰める羽目になる。
けれど、「そのうち分かると思いますよ」とクスッと笑われて、それ以上は教えて頂けなかったの。
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