18.勝算がおありなのですか?

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***  実家への訪問から2週間近く経った頃。  お風呂上がり、半袖にハーフパンツのパジャマ姿で、リビングの宗親(むねちか)さんから離れて自室で涼んでいたら、携帯が鳴った。  部屋には入居したばかりの頃にはなかった扇風機が増えていて。  それは梅雨入りして間もない頃、宗親(むねちか)さんが必要でしょう?と部屋に持ってきて下さったものだ。  もちろんあてがわれた部屋にはエアコンだってちゃんと完備されていたけれど、それはそれとして扇風機の存在はすごくありがたくて。  薄桃色を基調に、送風部の内周だけが差し色のように白色の羽なし扇風機は、別に必要ないだろうに丸型の頭部にウサギの耳が付いた可愛らしいデザインだった。  明らかにわざわざ私の好みそうなものを新調して下さったようにしか思えなかったのに、何故か箱無しの裸ん坊で説明書とリモコンをビニール袋に入れられて私の手元にやってきたその扇風機を受け取りながら、私の頭の中は疑問符で満載だった。  時を同じくしてリビングにも羽なしのスタイリッシュな扇風機が出ていたけれど、そちらは白とシルバーを基調とした落ち着いたものだったから、やっぱり明らかにピンクのは私仕様だよね?と思って。  もし新調して下さったんだとしたら、何だか申し訳なく思って。「もしかしてわざわざ買って下さったんですか?」とお聞きしたら「まさか。妹からのお下がりですよ?」とか……本当ですか?
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