2302人が本棚に入れています
本棚に追加
/720ページ
『春凪。葉月さんってすごい人ね』
お母さんがこんなに明るく声を弾ませることなんてお父さんが出張などで家をあけるときぐらいだったから、私は今、お父さんは留守かしら?とか思ってしまった。
「お父さん、お出かけ中なの?」
それで話の流れを無視してそう言ったら、『え? 居間にいるわよ?』と返ってきて。
思わず「えっ!?」と声を上げたら、『だってお母さんね、目が覚めたんだもん』とか。
私は何が何やら分からないままに、お母さんのマシンガントークを聞かされて。
情報が処理しきれなくて意識が遠のきかけた頃、『それでね、春凪ちゃん。この間の宗親さんとのことだけど――貴女は貴女のしたいようにすればいいと思うの』って言われた。
「私の……したいように……?」
思わずつぶやいたら『そう。好きな人のところへお嫁さんに行きたいなら行っちゃいなさい! 柴田に縛られることなんてこれっぽっちもないんだから!』と言い放たれて。
私はお母さんの自信たっぷりなその口ぶりに、ますます混乱してしまう。
最初のコメントを投稿しよう!