19.キミが思っている以上に僕は

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「くぅ〜! 最高です!」  そんなことを考えながら思わずつぶやいて、ニンマリ笑顔になる。  ふとそこでその様子を宗親(むねちか)さんにで見守られていると気付いた私は、慌ててピシッと姿勢を正した。 「う、うちの事情をご存知なんだったらっ……ま、前もって一言ぐらい教えてくださっても……よかったのに!」  しどろもどろになりながらも何とか不機嫌顔を取り繕いながらそう言ったら、「春凪(はな)だって自分のあちらでの立ち位置を僕に話してくれていなかったじゃないですか」と即座に返された。  それを言われてしまうと何も言えなくて言葉に詰まってしまう。  今時そんな前時代的な風習が残っている家に生まれたなんて、知られたくなかったんです。  何よりそれを知られてしまったら、宗親(むねちか)さんから「そんな面倒な女性との契約は、やっぱり反故(ほご)にしたいです」と言われてしまうんじゃないかという不安があったんですもの。  だけどそんなこと、口が裂けても言えないじゃないっ。  どうしてそんなこと思ったの?って聞かれてしまったら、私は宗親(むねちか)さんを好きになってしまったことを隠し通せる自信がなかったから。  そんな心の葛藤を、頭の中でひとりこねくり回して。  ブルーチーズを小さく削り取るように味わいながら、チビチビとウィスキーで口の中を湿らせる。
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