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「――まぁ、僕が話さなかったですからね」
即座に何でもないみたいにそう返されて、それでも宗親さんは私が話さなくてもうちの事情、ご存知だったじゃないですか、と心の中で不貞腐れる。
もっと言うと、私はうちの父や祖父が……というより歴代の柴田の当主たちの大半が、婿養子だと言うことさえ知らなかったの。
父や祖父にとっては、自分たちが必死に守っている家が、実は婿入りした先の家だと言うのは余り知られたくない事実だったのかもしれない。
そうして本来の血筋であるはずの柴田の女性陣が、長い歴史の中で迎え入れたはずの入り婿に服従することに慣れすぎて、男性に隷属することを当たり前だのように受け入れていたから、そんな事実があるだなんて私、露ほども気付いていなかった。
柴田の血を本当の意味で繋いでいたのが、母や祖母だったなんて。
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