20.起きないと襲いますよ?

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「――起きないと……襲いますよ?」  低めた声で春凪(はな)の耳に唇を寄せるようにしてわざとそうつぶやいてみたけれど、「耳元でゴチャゴチャうるしゃーい!」とムニャムニャ声で一蹴(いっしゅう)されてしまった。  さすがに意識のない女の子をどうこうしようと言う気にはなれなくて、僕は小さく吐息を落とす。  ――そう言うところも含めて大好きですよ、春凪(はな)。  心の中でこぼした本音を、さっきみたいに春凪(はな)の耳元でささやいたなら、彼女はどんな反応をするだろう?  同じように「うるさーい!」と切り捨てられてしまうかな? *** 「春凪(はな)、寝入ってしまう前に歯磨きだけしてしまいましょうか」  意識のない彼女のことならば、僕は目一杯甘やかしてあげることが出来る。  ラグの上に横座りで、ソファーにもたれ掛かるようにして眠る春凪(はな)をそっと横抱きに抱き上げると、僕は彼女を洗面所に連れて行った。 「座れますか?」  行儀はよろしくないけれど、緊急事態だからまぁ構わないか。  春凪(はな)を洗面台横のスペースに座らせると、壁に寄り掛からせるようにしてそっと手を離す。
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