2302人が本棚に入れています
本棚に追加
/720ページ
「――起きないと……襲いますよ?」
低めた声で春凪の耳に唇を寄せるようにしてわざとそうつぶやいてみたけれど、「耳元でゴチャゴチャうるしゃーい!」とムニャムニャ声で一蹴されてしまった。
さすがに意識のない女の子をどうこうしようと言う気にはなれなくて、僕は小さく吐息を落とす。
――そう言うところも含めて大好きですよ、春凪。
心の中でこぼした本音を、さっきみたいに春凪の耳元でささやいたなら、彼女はどんな反応をするだろう?
同じように「うるさーい!」と切り捨てられてしまうかな?
***
「春凪、寝入ってしまう前に歯磨きだけしてしまいましょうか」
意識のない彼女のことならば、僕は目一杯甘やかしてあげることが出来る。
ラグの上に横座りで、ソファーにもたれ掛かるようにして眠る春凪をそっと横抱きに抱き上げると、僕は彼女を洗面所に連れて行った。
「座れますか?」
行儀はよろしくないけれど、緊急事態だからまぁ構わないか。
春凪を洗面台横のスペースに座らせると、壁に寄り掛からせるようにしてそっと手を離す。
最初のコメントを投稿しよう!