20.起きないと襲いますよ?

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 そのまま彼女の歯ブラシに歯磨き粉をつけて「春凪(はな)、あーん」と言ったら、素直に口を開けてくれた。  寝惚けていてるときの方が、春凪(はな)は扱いやすい気がする。  そんなことを思いながら春凪の小さな口の中を傷つけないよう気を付けて、丁寧に歯磨きしてあげて。  妹の夏凪(かな)が幼い頃にも、忙しい両親に代わってよく歯磨きしてやったっけ、などと懐かしく思い出す。  コップに水を汲んで「口、すすげますか?」と眼前に差し出したら、寝ぼけ眼でそこはちゃんと自分で済ませてくれた。  ただ、高いところから洗面台のシンクに(かが)み込むのはしんどかったみたいで、危うく春凪(はな)が頭から流し台にダイビングしてしまいそうになって、支えるのが大変だった。  何だかんだあったけれど、春凪(はな)は歯磨きも済ませたし、パジャマにも着替えている。  このままベッドに運んでも平気かな?  そう思って再度春凪(はな)の正面に立って抱き上げようとしたら、「今日(きょお)宗親(むねちか)しゃんはみたいに(やしゃ)しいれしゅね。いちゅもは腹黒(はらぐりょ)S(えしゅ)なのに」とヘラヘラ笑いながら自分からギュッと抱きついてくれる。 「保育士って……」  ――そこはせめて王子様みたいに、とか言ってくれませんかね?  などと思いつつ。
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