2302人が本棚に入れています
本棚に追加
/720ページ
そのまま彼女の歯ブラシに歯磨き粉をつけて「春凪、あーん」と言ったら、素直に口を開けてくれた。
寝惚けていてるときの方が、春凪は扱いやすい気がする。
そんなことを思いながら春凪の小さな口の中を傷つけないよう気を付けて、丁寧に歯磨きしてあげて。
妹の夏凪が幼い頃にも、忙しい両親に代わってよく歯磨きしてやったっけ、などと懐かしく思い出す。
コップに水を汲んで「口、すすげますか?」と眼前に差し出したら、寝ぼけ眼でそこはちゃんと自分で済ませてくれた。
ただ、高いところから洗面台のシンクに屈み込むのはしんどかったみたいで、危うく春凪が頭から流し台にダイビングしてしまいそうになって、支えるのが大変だった。
何だかんだあったけれど、春凪は歯磨きも済ませたし、パジャマにも着替えている。
このままベッドに運んでも平気かな?
そう思って再度春凪の正面に立って抱き上げようとしたら、「今日の宗親しゃんは保育士しゃんみたいに優しいれしゅね。いちゅもは腹黒ドSなのに」とヘラヘラ笑いながら自分からギュッと抱きついてくれる。
「保育士って……」
――そこはせめて王子様みたいに、とか言ってくれませんかね?
などと思いつつ。
最初のコメントを投稿しよう!