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そのままの状態で、僕は昨夜のことに思いを馳せる――。
風呂上がりの身体に部屋着を身に付けた僕は、リビングの片付けを済ませた後、すっかり寝入っている春凪のすぐ横にそっと身体を滑り込ませた。
風邪をひかせないようにという配慮のつもりで掛けた肌掛け布団が良くなかったのか。
春凪は布団の中で薄らと寝汗をかいていた。
額に張り付く前髪をそっと払いのけると、春凪が「んっ」と小さく喘いで寝返りを打つ。
その声の色っぽさに不意打ちをくらって、僕は柄にもなくドキッとさせられて。
そのまま春凪のすぐそばに寄り添って息を殺していたら、冷たいところを探すみたいに、湯冷めしてスッカリ冷えてしまった僕の身体に春凪がモソモソと手を伸ばしてきた。
僕は、そんな春凪をこれ幸いと腕の中にしっかりと閉じ込める。
当初の予定では、こちらに背中を向けて眠っている春凪を、背後から包み込むように抱き締めて眠るつもりだった。
なのに、まさか春凪の方から向きを変えて僕に抱きついてきてくれるだなんて。――何て嬉しい誤算だろう。
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