20.起きないと襲いますよ?

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 添い寝が出来ても、彼女の後頭部くらいしか眺められないかな、とか思っていた薄暗がりの中。  ベッドサイドに灯した間接照明が照らす仄暗(ほのぐら)さに慣れてきた目が、腕の中の春凪(はな)の寝顔をはっきりと映し出した。  くっきりとした二重まぶたに、長くて密度の濃いまつ毛。  今は閉じられていて見えないけれど、春凪(はな)が目を開けると、そこにほんのちょっぴりブラウンがかった黒目がちの瞳が、ウルルンと収まっていることを、僕は知っている。 「……ホント可愛いな」  思わずうっとりと吐息を漏らすように本音を声に出してしまって、本人に聞かれやしなかったかとした僕だったけれど、幸い春凪(はな)はまだ夢の中にいるみたいでホッと胸を撫で下ろす。  これ幸いと、春凪(はな)の幸せそうな寝顔をじっと見つめ続けていたら、抑えきれない愛しさがふつふつと込み上げてきた。  僕は腕の中の春凪(はな)を起こさないよう細心の注意を払いながら、彼女の額にそっと口付けを落とす。  さっき、額に張り付いた春凪(はな)の髪をかき上げておいたのは正解だった。  唇を春凪(はな)の額に軽く押し当てたままそっと息を吸い込んだら、シャンプーの香りに混ざって春凪(はな)自身の甘い香りが僕を包み込む。
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