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腕の中の春凪が「んっ」小さく吐息を落として身じろいで、僕は幼い時分の妹をあやしていた要領で、ぽんぽんと背中を優しく叩いて彼女を眠りの縁に再度誘った。
と、規則正しく寝息をたて始めた春凪が、抱き枕でも求めるみたいに僕にギュッとしがみ付いてきて。
その動きに呼応するように春凪の髪からふわりとフローラル系の優しい香りが立ち昇る。
あー、まずい。これは結構くるな、と思ったと同時、強く押し当てられた身体から、春凪のふくよかな胸の柔らかさと仄かな温もりが伝わって、僕の理性は危うく崩壊寸前になる。
好きな子が腕の中にいるのに手を出せないと言うのはかなり堪えるな、と思いながら。
頭の中、邪念を追い払うみたいに羊を懸命に数えたのまでは覚えている。
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