22.玉ねぎが目にしみただけ

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*** 「あれ? そこに居んの、もしかして……柴田(しばた)さん?」  リラクゼーションルームの端っこ。  窓に面して一列に並べられたスツールに腰掛けて、苦虫を噛み潰したような顔をしながらブラックコーヒーをちびちび口に含んでいたら、不意に背後から声を掛けられた。  ――え? 誰?  いきなり名前を呼ばれたことに戸惑いながら振り返ったら……入社式の時に見たと同期の男性が。  身長は宗親(むねちか)さんと同じぐらいの180センチといったところ。  ただ、着痩せして見える線の細い印象の綺麗系ジャンルの宗親(むねちか)さんと違って、目の前の彼は黒髪短髪のがっちり体型。いわゆるラガーマンに近い。  うん。確かに見覚えはある。あるんだけど――。  ヤバイ。 (……お名前……何っておっしゃいましたっけ?)  なんて失礼なこと、いくら何でも言えるはずないっ。  だって向こうはちゃんと私の名前、呼んでくれたし!
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