22.玉ねぎが目にしみただけ

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 もぉ〜! 何で貴方、名札付けてないのよぅ!などと、己の記憶力の悪さを棚に上げて思ってみたり。  そこでふと自分の胸元に視線を落とした私は「あ」と思う。  私も付け忘れてますね、ごめんなさい。  思えば今日は朝からずっと机の中に入れっぱなしでした!  思い出させてくれて有難うございます。後でこっそりとつけておきますね。  ではなくっ。 「あー、その反応。さては柴田(しばた)さん。俺の名前が思い出せなくて困ってるでしょ?」  言われた言葉があまりに図星すぎて、思わずギクッと肩が跳ねた。 「柴田(しばた)さん、入社式の時はガチガチに固まってたからどんな子かイマイチ分かんなかったけど、結構面白いね」  ククッと笑った彼は、目が糸みたいに細くなって、やけに人懐っこい印象だなと思ってしまった。  年の近い男性は苦手なはずだけど、何だかこの人は大丈夫かも?とちょっとだけ肩の力を抜く。  それで、かな。「隣、いい?」と聞かれて小さくうなずいてしまったのは。  私と彼以外、今は広いフロア内、誰もいやしないのだから、何もそんなくっ付いて座る必要ないと思うんだけど。
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