22.玉ねぎが目にしみただけ

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「俺、大学は専門のトコに通ってたからさ、卒業の時にはもう左官技能士の資格持ってて。その絡みでいまの配属先、左官工事課ね……。柴田(しばた)さんの配属先の管工事課の1フロア上の4階に居んだけど……知ってた?」  聞かれて、そこは素直にフルフルと首を横に振る。 「ってことは同期の他の面子(めんつ)がどこに配属になったのかも……」  ギクッ。  す、すみません。あの日の私、別のことを考えていて何も頭に入っていませんでした、はい。  だってほら。私、あの日社長に「学生気分が抜けてない」ってお小言くらってたでしょう?  足利(あしかが)くん、記憶力良さそうだし覚えてらっしゃるんじゃないかしら。 (何にしても余りに周りへの関心がなさすぎでしょ、私!)  そう思って、申し訳ないやら情けないやらで縮こまったら、「同期が男ばっかはやっぱし仲良くしづらいよねぇ」と慰められた。 「別にさ、アレから俺らも柴田(しばた)さんと接点があったわけじゃないし、覚えてなくても気にすることはないと思う。けど――ま、せっかく再会できたわけだし、これからは話せたらいいな、とは思うわけ。どうかな?」  ニカッと人懐っこい笑みを向けられた上、 「いやー、それにさ。柴田(しばた)さんだけ他の奴らと違って何か大奥入りでもしたみたいに管工事課から出て来ねぇし、出てきても基本いつも上司と一緒だったでしょ? ずっと他の同期らと言ってたんよ。話しかけたくてもチャンスがねぇなって」  そう付け加えられて、「ひー! 宗親(むねちか)さんのせい!」と思った私は、慌ててコクコクと過剰なくらいうなずいた。
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