22.玉ねぎが目にしみただけ

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 まな板の上、皮を剥いて丸裸にしていた玉ねぎをザシュッと半分に切って薄切りにし始めたと同時、何でもないことみたいに宗親(むねちか)さんがおっしゃった。 「今日は出先で役所に行く便があったので、よ」  って。  今夜は親子丼でいいかな?なんて思いながら夕飯の支度をしていた私は、世間話のついでみたいにサラリと告げられたセリフに、思わず手が止まってしまう。 (えっと、今のって親子丼の作り方のレクチャーじゃないよね?)  などと頓珍漢なことを思う程度には混乱中で。  玉ねぎをスライスしていた手を止めて、私は思わず宗親(むねちか)さんを振り返った。  そうして数秒遅れて「え!?」と声を出して、切ったばかりの玉ねぎをまな板から払い落としてしまって、慌てて拾う。  いくら偽装とはいえ、婚姻届くらいは一緒に出しに行くものだと思っていたんだけどな? 「ですし、春凪(はな)の希望通り大安に提出したのですから構わないでしょう?」  呆気らかんと告げられて、カレンダーを見るよう促された私は、思考回路がショート寸前です。  宗親(むねちか)さんに指差された壁のカレンダーを見ると、今日の日付のところには、確かに「大安」と書かれていた。  いや、でもだからって。  私、今日出しに行くなんてこれっぽっちも思っていなかったですっ。  それに――。
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