23.本音と指輪と初めての夜

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春凪(はな)?」  明らかに不審な動きをしていたからだろう。宗親(むねちか)さんに箸を持つ手をそっと握られて動きを封じられて、心臓が大きく飛び跳ねる。 「本当に怒っては……いないんです。ただ――」  一緒に婚姻届を提出しに行けなかったこと、相談してもらえなかったことが寂しかっただけで。  そんな本音を伝えてしまったら、宗親(むねちか)さんは困ってしまうよね。  元々私たち、利害関係で結婚しようって話してたんだもの。  タイミングの良い時に婚姻届を出されたぐらいで、こんなにショックを受けてたらダメでしょう?  頭では分かっているのに、心が拒絶するからか、またしてもじわりと目尻に涙が滲んできて、私は懸命にまばたきをこらえた。  宗親(むねちか)さんにそんな情けない顔を見られたくなくて、見るとはなしに手元に視線を落としていたら、 「もしかして……指輪がまだなこと、拗ねてますか?」  私の手指をギュッと握る宗親(むねちか)さんに、私は心の中で「え?」と思って。
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