23.本音と指輪と初めての夜

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 そこで私をギュッと抱き寄せると、「端的にいうと……キミを抱きたいって気持ちがそろそろ限界だったんです」ってささやくように言ってくるとか……ずるくないですか?  私、宗親(むねちか)さんにお飾り程度にしか思われていない様に感じて悲しんでいる真っ最中なのに。  そんな(単に性欲のためだけかもしれないけれど)まるで私のことがとでも言わんばかりの理由を上げていらっしゃるとか。  私、ここで暮らし始めてからずっと宗親(むねちか)さんと一緒のベッドで寝起きしていて。  宗親(むねちか)さんは私に対して何もしていらっしゃらないから、まさかそんなことを思っておられるだなんて、思いつきもしなかった。  何なら私ばかり彼のことを意識していて。  思いっきりベッドの隅っこに寄って、毎晩毎晩宗親(むねちか)さんの寝息でさえも意識して眠れない夜を過ごしているんだとばかり思っていたくらい。 「……だけど宗親(むねちか)さん、今までそんな素振り、微塵も見せなかったじゃないですか」  思わず非難がましく言ったら「見せても良かったんですか?」って耳朶を()まれてゾクリと全身が粟立つ。 「よ、良くない、ですっ」  耳を押さえて身体をすくませた私に、宗親(むねちか)さんがクスクス笑って。 「でも今夜からは大いに見せることにしますね」  とか。  偽装夫婦問題で泣きそうだったこともポンと頭から飛んでしまうくらい、私はそのことに気持ちを囚われてしまう。 「――春凪(はな)。今夜はいよいよ初夜ですね」  宗親(むねちか)さんの言葉に、私は何も答えることができなかった。
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