24.桁違い

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***  朝の宣言通り、宗親(むねちか)さんは自分も残業をしなかったし、当然のように私にもそれをさせなかった。 『駐車場で待っています』  宗親(むねちか)さんが私の横を通り過ぎ様、デスクの上に資料と一緒にそんなメモを置いて。  私はそれを見るなり朝の熱がぶり返すようで、慌てて首を振ってそれを振り払うと、身支度を整えてオフィスを飛び出した。  エレベーターで同じ箱に乗り込むのは何となく(はばか)られて、そこだけはわざとズラして。  外に出たら数十メートル先を、駐車場に向けて歩いておられる宗親(むねちか)さんの後ろ姿が見えた。 (あーん、かっこいいっ!)  とか思っているのと同時に、アレコレを考えてしまいそうな自分を必死で抑えているのは内緒。  私のご主人様(偽装だけど)は、後ろ姿もキスのテクニックも(あっ、違っ)……とっ、とにかく何もかもが誰よりもイケてます!  定時を過ぎてすぐだからかな。  私たちの他にも社を出て駐車場に向かう人たちが幾人も見えて。 (ダメ、ダメっ!)  私は緩みそうになる頬をペチペチと叩いて、必死に気持ちを引き締めた。  そんな風に立ち止まってフルフルしている私を、怪訝(けげん)そうな顔をしながら沢山の人が追い抜かしていく。 「柴田(しばた)さん、お疲れ」  と、不意に背後から声をかけられて、心の中で「ひえっ」と悲鳴を上げた私は、恥ずかしいくらいビクッと肩を跳ねさせてしまった。
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