24.桁違い

8/14
前へ
/720ページ
次へ
「あ、そうだ! 週末だしさ。これから……どう? 呼び掛ければ同期(みんな)、割とすぐ集まれると思うんだけど」  身振り手振りでお酒を飲む仕草をされて、私は慌てて顔の前で手を振り回して頭を下げた。 「ごっ、ごめんなさいっ。今日は――」  これから宗親(むねちか)さんとの初夜がっ。  考えただけで顔がぶわりと熱を持ってしまう。 「あっ、もしかして彼氏とデート?」  その表情を見て、そう思われてしまったみたい。  至極もっともな足利(あしかが)くんの問いかけに、私は咄嗟、照れ隠しも手伝って「かっ、彼氏なんて居ないですっ」と答えてしまっていた。  宗親(むねちか)さんは私の夫(偽装だけど)であって、彼氏ではない。……だから間違いじゃない、よ、ね?  そんなことを思って、さっきより遠ざかってしまった宗親(むねちか)さんの後ろ姿を見つめる私に、足利くんが「そっか、彼氏いないんだ」と嬉しそうにつぶやいた。  でも意識ここに在らずの私は、それには気付けなかった――。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2336人が本棚に入れています
本棚に追加