25.初めての*

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 慌てて言い募ろうとしたら「聞いてませんでしたか? 僕は〝可愛い女の子〟とも言ったはずです」ってめちゃくちゃ怖い顔で睨んでいらっしゃるとか。  嘘でしょ、嘘でしょ、嘘でしょー!?  いくら仮初(かりそめ)の夫婦だからってリップサービスが過剰ですよ、宗親(むねちか)さんっ!  突然の誉め殺しに、社交辞令とは分かっていても、照れて真っ赤になってしまう。 「あ、有難うございます?」  一応ここは偽装妻として旦那様のお気遣いにお礼を申し上げなくては。  しどろもどろ、語尾が疑問系みたいに持ち上がった言い方をしたのに、宗親(むねちか)さんは 「どういたしまして」  と穏やかに微笑み返してくださって。  その笑顔がいつもの腹黒スマイルとは違ったから私、ドキン!と心臓が大きく飛び跳ねてしまった。  さすがにそんな宗親(むねちか)さんを直視出来なくてソワソワと瞳を逸らしたら、いきなり額の髪の毛をかき上げられておでこにキスを落とされる。 「ひゃっ」  そんなっ。  甘々な恋人みたいなキス。  エッチなディープキスより逆に恥ずかしいではないですかっ。
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