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言うと同時に宗親さんに優しく口付けられて、私は身体に熱が灯るのを感じた。
「んっ……ぁ」
口付けを解いた宗親さんが、熱に浮かされてトロンとなった意志薄弱で根性なしの私をじっと見つめてくる。
「どうして春凪は、いつまでもキミを裏切った男の言葉ばかりに囚われているの? 何故いま一緒にいる僕のことを信じようとしないの?」
「そ、それは……」
――宗親さんが……私のことを好きじゃない、から。
少なくともこうちゃんは私のことを好きだと言ってくれていた。宗親さんとはそこのところが根本的に違うのです。
私が宗親さんのことを好きな気持ちは、こうちゃんの時とは違って一方通行で……。
こうちゃんのは一応そうじゃなかったから……あんなだったけど相互関係があるように思えてて。
だから宗親さんの優しい言葉は全て偽装夫としての義務に聞こえてしまうんです。
(本心からそう思われているのなら、心の底から嬉しいって思えるのに!)
(宗親さんのこと、信じられるのに!)
(こうちゃんのひどい言葉なんてあっという間に上書き出来ちゃえるのに!)
そんな風に思ってるだなんて、烏滸がましくて言えるわけないっ。
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