25.初めての*

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宗親(むねちか)さん、それでも私は貴方のことが大好きです……)  言えない言葉に押しつぶされそうになりながら、涙目で宗親(むねちか)さんを見上げたら、言いたいことの半分も言葉をつむげない役立たずの唇を、彼が愛おしげに指の腹でそっと撫でた。 (宗親(むねちか)さんのバカぁ! そんな風に優しく触れられたら、もしかして愛されてる?って勘違いなるじゃないっ!)  言えないって諦めたばかりなのに。 「――それは?」  言い掛けた言葉の先をやんわりと促されて、宗親(むねちか)さんの優しさに(ほだ)されまくりの私は、つい本音を言いそうになってしまう。 「……だって……宗親(むねちか)さんがっ」  そこまで言って、宗親(むねちか)さんに「僕?」とつぶやかれたのを聞いたら、言えない!って気持ちが優勢になって、私、慌てて唇を噛み締めて言葉を呑み込んだ。 「ダメですよ、春凪(はな)。そんなに強く噛んだら、唇が切れてしまう」  途端宗親(むねちか)さんにそう(いさ)められて、唇に触れていた指を口中に差し込まれる。  そうされてもなお、私は唇を引き結んだ力を緩めることが出来なくて――。  そこまでくると、さすがにおかしいと思われたんだろうな。  宗親(むねちか)さんが小さく吐息を落としてから、 「……ねぇ春凪(はな)。それはそんなに言いにくいことなの? ――えっと、よく分からないんだけど……キミが僕を信じられない理由が〝僕にあるから〟って思ったんで合ってる?」  言葉とともにじっと目を見詰められて、私は苦しくて切なくて泣きそうになった。
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