25.初めての*

22/31
前へ
/720ページ
次へ
 だって……そうだけどそうじゃなかったから。  私が勝手に宗親(むねちか)さんを好きになって、宗親(むねちか)さんからも愛されたいって求めて悶々としてるだけ。  宗親(むねちか)さんはちっとも悪くない。 (これじゃあまるで、宗親(むねちか)さんに責任転嫁してゴネてるだけの駄々っ子だよ)  こんな面倒くさい契約結婚の相手、私だったら捨てたくなる! 「ヤダ……。宗親(むねちか)さん、お願っ、捨てない、で……」  無意識にそんなことをつぶやいて、私は宗親(むねちか)さんから伸ばされた腕に必死にしがみついた。  宗親(むねちか)さんは一瞬驚いたような顔をなさってから、 「春凪(はな)。どうしたの? 僕は絶対にキミのことを捨てたりなんてしませんから。大丈夫だから……。ね? 落ち着いて?」  私をそっとベッドから抱き起こすと、ふわりと優しく腕の中に閉じ込めて下さった。  しばらくそのまま宗親(むねちか)さんの腕の中で彼の温もりに包まれて気持ちを落ち着けた私は、抱きしめられたまま小さく身動(みじろ)ぐと、彼からそっと距離をあけて自らのパジャマのボタンに手を掛ける。 「――春凪(はな)?」  そんな私を、宗親(むねちか)さんが戸惑いに揺れる瞳で見詰めてきて。 「……今日は私のこと、抱いて、……くださるんでしょう?」  私は薄らと涙に潤んだ視界のまま、宗親(むねちか)さんのお顔を見上げてそう問いかけた。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2356人が本棚に入れています
本棚に追加