25.初めての*

26/31
前へ
/720ページ
次へ
 そんな風に思ってしまって……でもそういう変なところでやたら真面目で理詰めなところがある宗親(むねちか)さんだからこそ、私は彼に惹かれたんだと思い至った。  宗親(むねちか)さんは基本腹黒ドSのくせに、いつだってここぞと言う時には私と真摯(しんし)に向き合ってくださるの。  だから「愛されているのかも?」ってさせられるし、その錯覚のせいでどんどん貴方のことを好きになってしまう。  お願いだからこれ以上馬鹿な私に勘違いさせないで? 「こっ、この震えは……そう、あれっ! む、武者震いですっ」  場違いなセリフだというのは十分承知しているつもり。  だけど「全てをさらけ出して、貴方に嫌われるかもって思うと不安で震えてしまうんです」、「好きになってくれない貴方を身体を使ってでも繋ぎ止めたくてこんなことをしているのが卑怯だと十二分に理解しているから……。そんな躊躇(ためら)いが手元を狂わせています」だなんて本音、口が裂けても言えるわけない。  それでも宗親(むねちか)さんは、私の〝覚悟〟だけはしっかりと受け止めて下さったみたい。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2356人が本棚に入れています
本棚に追加