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心ではそう思ったけれど、指輪より先に食卓を見て?とも思ってしまって、「水仕事したり、生モノ触ったりしてたんですものっ。付けとけませんよ」なんて憎まれ口を叩いてみたり。
何せ百五十万円もする指輪です。
そうじゃなくても私、炊事のときは指輪は外しておきたい派。
「もしかして春凪。会社の給湯室でコーヒー淹れたりするときも外してたり?」
途端少し声を低めて聞かれて、「さすがにそこまでは」と答えたら満足そうな腹黒スマイルを浮かべられた。
「――でしたら結構です」
何が結構なのかは存じ上げませんが、洗い物するときはポケットに仕舞ってますよ?と心の中で密やかに付け加える。
宗親さんの視線が痛くていそいそと指輪を指にはめながら、お昼過ぎに九階のリラクゼーションルーム付近であった出来事を思い出した私は、ぷぅっと頬を膨らませて宗親さんに物申した。
それが、本章冒頭の「宗親さんっ! これ目立ち過ぎて会社でめちゃくちゃ気にされまくっちゃうんですけどっ」というセリフです。
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