29.目立ち過ぎて困ります

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***  夜。  宗親(むねちか)さんとソファーに横並びに座って。  ビールが注がれたグラスを手にソワソワしてしまうのは、今夜は明らかに宗親(むねちか)さんが座る位置が物凄ぉーく私に近いと感じるから。  ソファーの肘掛(ひじか)けから自分までの距離と、自分と宗親(むねちか)さんとの隙間を目測しながら、私は落ち着かない気持ちで大好物のチーズ――ケーゼレベレンペッパーチーズ――に手を伸ばした。 「や、やっぱりビールには……えっと、ほ、程よく辛みのきいたペッパーチーズが合いますね」  なるべく左隣に座る宗親(むねちか)さんから伝わってくる体温のことは考えないようにしながら、大好物のチーズを齧ってビールをグイッと煽る。  だけど紡いだ言葉はグダグダで。  それを誤魔化すみたいにゴクゴクと喉を鳴らして半分以上ビールを飲み干して。宗親(むねちか)さんに「え……」とつぶやかれた。  この距離!  これが飲まずにやってられますかぁ〜!って感じなんですけど……まさか宗親(むねちか)さん、今日も昨日みたいなことなさろうとか思っていたりしません、よ、ね?  考えただけで心臓バクバクでどうにかなりそうです!
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