30.夫婦茶碗的な

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***  アイランドキッチン前に置かれた椅子に下ろされた私は、宗親(むねちか)さんが目の前に並べて下さったプレートに目を輝かせる。  イングリッシュマフィンの上に乗っかっているのは、少し焦げ目を付かせてとろけさせたチーズを纏った、厚切りトマトと目玉焼き。  リビングに入ってすぐ香ってきた香ばしい匂いの正体は、プロセスチーズが焼けた香りだったみたい。  愛用のナマケモノマグに注がれた、ミルクたっぷりの熱々カフェオレがその横に添えられる。  宗親(むねちか)さんは先にご飯を済まされたのか、いつか私も使ったことのある、例のスタイリッシュな透明コーヒーカップにブラックコーヒーを注いで、キッチン越しに私を真っ直ぐ見つめてきて。 「春凪(はな)の大好きなチーズも入れましたし、きっと美味しく食べられると思いますよ」  言われて、私は宗親(むねちか)さんが敢えてチーズを使った朝食で、私を甘やかして下さったんだと悟った。 「あ、有難うございます」  何だかすごく大切にされているみたいで、照れ臭さに宗親(むねちか)さんの顔が見られなくなった私は、プレートの上にばかり目線を彷徨(さまよ)わせてしまう。  ソワソワしながら「いただきます」をして、マフィンの端っこをチミッと齧る。  途端チーズの風味が鼻の奥に抜けて、思わず笑みがこぼれた。 「美味しいです」  言いながらマグカップを手にとって、中身をひとくち口に含んだ。
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