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夕方。
「ただいま」
そんな、よく通る低音イケボとともに宗親さんが戻っていらした。
それを察知した途端、私は無意識で子犬みたいに玄関先までスリッパの音をパタパタと響かせながら彼を迎えに走り出てしまって、内心(しまった! やっちゃった!)って思ったの。
だってそれ、〝本当の〟新婚さんみたいで痛いなってずっと我慢していたことだったんだもん。
今日一日宗親さんと離れて、ひとりだけで有給を堪能させてもらった弊害が、こんなところで発露してしまった。
私の馬鹿っ!
心の中で冷や汗ダラダラの私を、宗親さんは一瞬物凄く驚いた顔で見つめていらした。
そりゃそうですよね。こんなのされたら引きますよね、ごめんなさい。
そう思ったと同時――。
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