30.夫婦茶碗的な

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 宗親(むねちか)さんが腕を少し緩めてくれたから、ちょっとだけ距離をあけて。  間近で宗親(むねちか)さんのお顔を見上げたら、私の顔を覗き込むみたいにして、ニコッと極上の笑顔を向けられた。  ほぼ徹夜状態で一日お仕事をなさっていらしたと言うのに、全然疲れた様子を感じさせないの。  しかも――。 (こっ、この笑顔は腹黒くないやつっ)  そのパンチ力に心臓が高鳴って、それを後押しするように宗親(むねちか)さんの身にまとう香りがふわりと鼻腔をくすぐったから堪らない。  私の中で、ドキドキが加速して大パニックを起こしています!  朝と違ってマリン系のコロンよりもご本人の匂い――もしやフェロモンですかっ?――が色濃く感じられた気がして、私、ソワソワと落ち着かないの。  身体全体がカーッと熱くなるのを感じながら何とか言葉をつむぐ。 「あ、あのっ、朝頼まれた件、私なりに頑張ってみたんですけど……チェックして頂けますか?」  ちょっと春凪(はな)!  会社じゃないんだからもう少し可愛く言えないの!  そんなことを思いつつ――。
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