31.同期会と宗親さんの嘘

6/19
前へ
/720ページ
次へ
 宗親(むねちか)さん、案外庶民的なものをお出ししても文句ひとつ言わずに――というかむしろ美味しそうに平らげてくださるから偉いなぁって思って。  ついついそういう宗親(むねちか)さんの姿が見たくて、素朴な家庭料理をお出しする頻度が高くなってしまう私です。  これに、以前湯掻いて小分けにして冷凍保存してあったほうれん草を解凍してお豆腐のプチパックを利用して白和えにしてから小鉢に盛って。  トロトロに煮詰まったサバの味噌煮をお皿に移してフライパンの中のタレをトロリと回しかける。  一緒に食べるときはお出しする直前に針ショウガを上にチミッと載せるんだけど、今日はいつ召し上がられるか分からないからやめておいた。  鍋の中で粗熱をとっておいた切り干し大根をチョチョッと小鉢にお上品に取り分けて。  お味噌汁だけは今よそったら早すぎるかなって思って汁椀だけ準備して作ったもの全体にふんわりラップをかけた。 『お鍋の中にお味噌汁があります。味噌煮はレンジでチンして温めてくださいね。ハナ』  メモ用紙にそんな走り書きをしてそのそばに置いたら思わず「よし!」と声が出た。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2326人が本棚に入れています
本棚に追加