31.同期会と宗親さんの嘘

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 経験上、インターホンが鳴ってから部屋に業者さんが辿り着くまでに五分近くかかるのを知っていたから、間に合うかな?と思いながらリビングに行ってテレビの四つの引き出しを左側から順に開けていく。  一言に「テレビのキャビネットの引き出しの中」と言っても、壁一面が全面収納ボックスみたいになった作り付けの棚。  馬鹿でかい上にテレビも大きいから探すとなると結構大変なのです。  一つ目の引き出しは外れ。  蝋燭とか懐中電灯とか電池とかゴロッと入っていたから、緊急時に備えているのかしら?と思いつつ。 「一番右側だったら嫌んっ」  なんてひとりごとを言いながら二つ目の引き出しを開けたら、クリップや画鋲(がびょう)やホッチキスの針が入っていて、その中に小さな朱肉を見つけた私は「ここかも?」と思いながらガサガサしてみた。  そうして、雑多なものたちの下に隠されるように入れられていたものを見て、思わずフリーズしてしまう。 「え、何でがまだここに……?」  クリップなどの下。  半透明なクリアケースに挟まれた書類を手に取って、中身を取り出した私はその場にストン……とくず折れた。  印鑑を探していたことがポンッと頭から抜け落ちてしまうぐらいそれを見つけてしまったことはショックで。  そのままずっと動けずにいたら、インターホンが再度鳴って、宅配業者さんが玄関前に辿り着いたことを知る。
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