31.同期会と宗親さんの嘘

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***  ぼんやりと街を歩いていたら、だらりと伸ばした手の先、無意識に握ったままだったスマートフォンがブーッブーッと震えて着信を知らせてきた。  画面を見ると北条(ほうじょう)くんからで。  着信と一緒に表示されている時刻を見ると、同期会の時間を十五分ほど過ぎていた。  見つめる先、画面をポツポツと水滴が染めて……。 「雨……?」  そこで初めて雨に降られている事に気がついた。  家を出た時には一時間半以上ゆとりがあったはずなのに。  私、どれだけぼんやりと街中を彷徨(さまよ)っていたんだろう。  いつ降り出したのか分からない雨が、しっとりと身体を濡らしていた。  七月とはいえ、夜に濡れたままでいると体温を奪われてしまうらしい。  そう意識したら、身体がすっかり冷え切っていることに今更のように気がついた。  無断で約束の時間に遅れているのだから、どんなに億劫でもこの電話には出なきゃいけないって思って。  応答ボタンをタップしようと思ったら、指先が冷え切っていて凄く押しづらいことに驚かされる。 「……もしもし?」  それでも何とか通話に切り替えたら「柴田(しばた)春凪(はな)。遅れていることに対して何か申し開きがあるなら今すぐ言え」と、どこか無機質にも感じられる事務的でぶっきら棒な声。  でも、逆にそのつっけんどんな物言いが今の私には有り難く感じられて。
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