31.同期会と宗親さんの嘘

13/19
前へ
/720ページ
次へ
 耳を澄ませてみても、足利(あしかが)くんや武田(たけだ)くんの声が聞こえてこない。  代わりに微かに雨音と風の()が聞こえる気がするから、北条くんはこの雨の中、わざわざ店の外に出て電話をかけてくれているのかな?  そんな、どうでもいいことを思っていたら「お前、ひょっとしていま外か?」と自分が考えていたことと同じことを問いかけられて驚いた。 「あ、……はい」  思わずそれを肯定してしまってから「しまった」と気付いたけれど後の祭り。 「会場が変わればいいってことだな? みんなを連れて拾いに行ってやるからどこか雨がしのげるところに入って待ってろ。すぐに向かう」  有無を言わせぬ調子でそんなことを言われてしまって、私は困ってしまう。 「あ、あのっ、でもっ」  私、びしょ濡れだし……そうじゃなくても、今日はみんなとワイワイやれるような気分じゃないの――。  そう言おうとしたら「お前が主役の同期会だ。言い訳してる暇があったらさっさとどこで待つか言え」と畳み掛けられてしまった。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2324人が本棚に入れています
本棚に追加