31.同期会と宗親さんの嘘

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 冷え切った身体に温かなお風呂はとても魅力的で。  お言葉に甘えてお風呂場へ向かった私は、濡れた服を脱ぐときにふと、宗親(むねちか)さんからもらった指輪を薬指にはめたままだったことに気がついた。  お風呂の時はいつも外していたから一旦取りはしたものの、風呂上がり、それを再度指にする気になれなかった私は、散々迷って身に付けていたネックレスに通して首から下げた。  正直見るのも嫌だったけれど、値段を思うとぞんざいにも出来ないのが腹立たしい。 (私のバカ。どうして家を出るときに外してこなかったの!)  茫然自失だったとはいえ、真っ先にこれを外さなきゃいけなかったのに。  着ていた服のポケットに仕舞えたらよかったんだろうけど、濡れた服はほたるが洗濯しておくよと言ってくれたから。  ずぶ濡れの服を持ち歩くのはどうかと思っていた私は、後日ほたるに借りた服を返しにくるついでに受け取ればいいかなって思って、彼女の厚意に甘えさせてもらうことにした。
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