31-2.その頃の宗親

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 もしもに備えてすぐには見つからないよう、上にクリップや画鋲(がびょう)などを入れておいたはずなのに、それらを取り払って、春凪(はな)はこの書類を見つけてしまったということだろうか。  キャビネット前に無造作に落とされた【婚姻届】を見て、僕はその場に立ち尽くした。  提出したと嘘をついたこの書類がここにあるのを見つけて、春凪(はな)はどんな気持ちになったんだろう。  ひょっとして……僕に裏切られたと思った?  だからこそ、春凪(はな)はこんな風におかしな状態で、部屋を出て行ってしまったんじゃないだろうか。 「春凪(はな)……です」  小さくつぶやいて、僕は飛び出すように部屋を後にした。  Misoka(ミソカ)に行けば、春凪(はな)を捕まえられるだろうか――。
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