32.春凪の愚痴と宗親の本心

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*** 「あの、さ……ずっと気になってたんだけど。――いま指輪してないのと……今日Misoka(ミソカ)に来なかったのって……ひょっとして関連あったりする?」  大分お酒が進んできて、みんなの気持ちがほぐれた頃、足利くんが恐る恐ると言った調子で話しかけてきて。  北条(ほうじょう)くんが「おい」と彼をたしなめてくれる。  武田(たけだ)くんはと言うと、ゴロンと横になって、すやすやと眠ってしまっていた。  真剣な表情で問うてくる足利くんを見て、一時の感情に駆られて指輪を外してこの場に来てしまったのは失策だったと気がついたけれど後の祭り。  お酒の力も手伝って、私は「(べちゅ)宗親(むねちか)しゃんと喧嘩とかしらわけじゃないんれす」と呂律(ろれつ)の回らない口調でフワフワと答えた。 「しゅっごく大切(たいせちゅ)(ころ)、……(うしょ)(ちゅ)かれてらのが堪えたらけれ……」 (すっごく大切な事、嘘()かれてたのが堪えただけで)  ヘラッと笑ったつもりだったのに、涙がポロリとこぼれ落ちた。 「わー! ごめっ、柴田(しばた)さんっ! 俺が要らんこと聞いた!」  それを見て足利くんが慌てて手を振り回して。  北条くんが無言でティッシュを手渡してくれる。  私がグスグス言いながらそれで涙を拭っている間、二人は何も言ってこなくて。  ゴーッというエアコンの稼働音と、武田くんの「あ、そこ、もっと……」という謎の寝言だけが静かな室内に響いていた。
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