32.春凪の愚痴と宗親の本心

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 ヒエッ。  真っ暗闇ならよかったのに、残念ながらすぐそばに足利(あしかが)くんのマンションのエントランス付近を照らす灯りが灯っていて。  私はマトモに宗親(むねちか)さんのお顔を見てしまった。  だっ、大好きですっ!  そのハンサムなお顔もゾクゾクするような素敵なお声も、どこか掴み所のないひねくれた性格も……何もかも!  などとになって、緩みかけた口元を私は慌てて引き締めた。 「春凪(はな)……。僕の目を見てちゃんと話して?」  う……。  それは反則ではありませんか?  私は宗親さんの真剣な表情に、心のうちまで全て見透かされた気持ちになってしまう。 「わ、私……」  何だか目端にじんわり涙が浮かんできて、私はどうしたらいいのか分からなくなる。  本当は、「大好きですけど何か文句ありますか⁉︎」と逆ギレしてしまいたい。  だけどそれが出来たら苦労はしないの。 「……こんなの卑怯だし最低ですね」  オロオロとする私を見つめていた宗親さんが、小さく吐息を落としてそうつぶやいて視線をそらしたから。  私は呆れられてしまったんだと怖くなった。
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