32.春凪の愚痴と宗親の本心

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「あ、あのぉ〜……、お取込み中のところ大変申し訳ないんですけど」  背後から恐る恐ると言った調子でいきなり声をかけられた。  私は夢見心地なままその声に振り返って……。 「あっ、足利(あしかぎゃ)きゅんっ⁉︎」  突然の第三者――しかも同期!――の登場に、穴を掘りまくって地下に埋まりたくなるぐらい恥ずかしくなった。 「あれ? え⁉︎ ……な、何で織田(おりた)課長が⁉︎」  北条(ほうじょう)くんと違って、私の婚約者(?)が宗親(むねちか)さんだと気付いていなかった足利くんは、私のラブシーンの相手が管工事課の織田(おりた)課長だと知って瞳を見開いて。 「あ、あにょっ! こ、これはっ」  どうしよう⁉︎とテンパりまくりの私の肩をそっと抱いて自分の方に引き寄せると、宗親さんが「春凪(はな)から聞いていませんか? 彼女の婚約者は僕だと」と、極上の腹黒営業スマイルを浮かべた。 「むっ、宗親しゃ!」  私が慌てて言ったら、足利くんが「あっ!」とつぶやいて。 「喧嘩した訳じゃないけど大事なことで嘘をついてて柴田(しばた)さんを泣くほど悲しませた〝宗親さん〟って、織田(おりた)課長のことだったんだぁ!」  合点(がてん)がいったようにポンッ!と手を打って「俺、織田(おりた)課長の下の名前知らなかったから気付かんかった! わー、不覚!」とか。  何のですか⁉︎
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