32.春凪の愚痴と宗親の本心

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*** 「春凪(はな)、そう言えばその服もご友人に借りられたのですか?」  運転しながらだから、宗親(むねちか)さんのお顔は基本前に向けられたまま。 「そんな服、キミは持っていなかったですよね?」  ちょっ、宗親さんっ! その発言、何気にストーカーチックですよ⁉︎  私、自慢じゃないですが、宗親さんの手持ちのお洋服なんて把握していませんもの!  そりゃあ圧倒的な枚数差のせいもあるかも知れませんが。  時折チラリと流される宗親さんからの視線に、私は何だかソワソワと落ち着かなくて。  一人、心の中で下らないツッコミを入れて心の均衡を保とうと試みる。 「わ、(わらし)が着てたにょ、ずぶ(にゅ)れになっちゃったん()……」  居た堪れなさにうつむきながらそう言ったら、宗親さんが吐息を落とす気配がして。 「そんなに濡れただなんて……身体、冷えませんでしたか?」  初夏とはいえ、夜のこと。  雨の中、濡れたままホロホロと夜の街を彷徨(さまよ)った私は、そのとき結構寒かったのを思い出す。  だけど――。 「ら、大丈夫(らいじょぉぶ)れすよ。しゅぐ、ほたるにお洋服借りに行きましたもにょ」  ふわふわと答えて、「(わらし)、結構優秀なのれ」と胸を張ったら「優秀な人間はそもそも雨に濡れるようなヘマはしません」とにべもないお言葉。
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