33.彼には彼なりの理由があったわけで

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 だって前にここで初めて宗親(むねちか)さんと対面した時、二人は微塵もそんな感じじゃなかったもの。 (あれは二人でわざとあんな雰囲気になるよう示し合わせてたのかな?)  何のためかは分からないけれど、私、まんまと騙されていたんだ、って思って。 「お二人は本当(ほんとぉ)に仲の良いお友達(ともらち)なんれしゅね」  ホワホワとしながらもムゥーッと二人を睨み付けたら、「あれ? 柴田(しばた)さん、ひょっとして出来あがっちゃってる?」と、明智(あけち)さんにキョトンとされた。  さっきまで喧嘩してたくせに。  私の言葉でいつも通りの涼しいお顔になった二人に、内心「言い合い、もう終わりなの?」と密かに残念に思っていたら。 「ええ、どうやら僕のせいらしいです」  言って、宗親さんが嬉しそうにフワッと笑ったのを、明智さんが見逃さなかったのが嬉しい。 「げっ。織田(おりた)。何、お前その笑顔っ。……らしくなくてすっげぇ気持ち(わり)ぃーんだけど」  明智さんがボソッとつぶやいて。  私の方をチラリと見て「柴田(しばた)さんの影響か?」と苦笑する。
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