33.彼には彼なりの理由があったわけで

13/29
前へ
/720ページ
次へ
 結局ギュッと握られたままの左手を引かれ、私はリビングにされる。  そうして、宗親(むねちか)さんの丹精なお顔をソワソワと見詰めながら彼の言葉を待った。 「――まず、……最初に聞かせて下さい春凪(はな)」  手を離してもらえないままにあごの下に手を添えられて上向かされた私は、否応なく宗親さんと視線を合わせられる。  おかしいですっ。  怒っていたのは私で、宗親さんは私に謝罪なさるために追いかけていらしたんじゃなかったですかねっ⁉︎  現状だとまるっきり私の方が立場が下に見えるんですが気のせいでしょうか?  ソワソワと大好きな宗親さんのお顔を見詰めながら不安に瞳を揺らせたら、すぐ間近、宗親さんに低音イケボで問い掛けられた。 「春凪(はな)、キミは僕のことが好きですか?」  と――。  そういえば宗親さんからは「好き」って言われたけれど、私からはちゃんとお返ししていない気がします。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2324人が本棚に入れています
本棚に追加