33.彼には彼なりの理由があったわけで

14/29
前へ
/720ページ
次へ
 もう、私の気持ち、隠さなくてもいいんだよね?  ちゃんと宗親(むねちか)さんにこの想いをぶつけてもいいんだよね?  私は期待と羞恥(しゅうち)に瞳を潤ませながら、初めて宗親さんに本心を吐き出した。 「……好きです! 宗親さんが大好きです! そのお顔もお声も、掴みどころのない性格も……。何もかもが大好きですっ!」  胸の内に秘めて押し殺して、押し潰してギュウギュウに締め付けて……。  絶対に表に出してはいけない感情だと思っていたのに。  私、ちゃんと愛する人に「好き」って伝えられたよ?  これって凄く幸せなことじゃない?  そう思ったからかな。  自然と涙がポロポロ溢れて止められなくなって――。 「宗親さ、のことっ。どうし、よぉ……もな、く……大、好き……な、んです……。やっと……気、持ち……ちゃんと、伝、えら、れましたぁ〜っ!」  私は宗親さんにギューッと抱きしめられながら子供みたいに声を出して泣いた。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2324人が本棚に入れています
本棚に追加