33.彼には彼なりの理由があったわけで

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「言いましたよね? 僕はキミを妻に欲しいと(こいねが)った時から……いいえ。それよりもっとずっと前から……春凪(はな)のことが好きだった、って」  言われて、そう言えばそんなことをおっしゃってらしたなって思い出してコクッと頷いたら、膝に載せたままだった手をギュッと握られた。 「失恋したと……僕にとっては願ってもない千載一遇のチャンスをもたらしてくれた大好きなキミを。また他の男に取られたくない一心で契約結婚だの、入籍は済ませただのと小賢しい御託(ごたく)を並べて僕のそばに縛りつけたくせに。……最初からそこだけは譲れないラインだって、自分の中で決めていたんです」 「最初……から?」 「はい」  恐る恐るつぶやいたら即答されて、私は息を呑む。 「幸いキミは僕の見た目と声は好みのだって教えてくれたから。だったらそばに置いて毎日嫌って言うほどキミのことを占有して……。そうしていく中で絶対いつか丸ごと僕のことを好きになってもらうって……。春凪(はな)から僕に〝好きです〟って言ってもらうって……。変に意地になっていました」  何それ?  そんなの、そんなの――。 「宗親(むねちか)さんの……バカ。偽装だって言われてるのに……宗親さんのこと、好きになりましただなんてルール違反な気持ち、私から伝えられるわけないじゃないですかっ」  私、ずっとずっとそう思っていたから……。だからこの気持ちに気付かれたら終わりだって……すっごくすっごく辛い思いをしてきたのに!  宗親さんの変な意地のせいだったって思ったら、むちゃくちゃ悔しくなった。
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